カテゴリ:漢語歳時記( 51 )

虚室

陶淵明「園田の居に帰る」第一首に、「戸庭 塵雑無く、 虚室 余間有り」という。
一家の内は世間の塵挨に汚されることもなく、がらんとした部屋にはたっぷりとしたゆとりがある。
「余間」は単に空間的な余裕ではなく、心の状態を象徴している。
その裏には、「荘子」人間世編の「虚室に白を生ず」がある。
空虚な中に澄みきった光が射しこんでいるありさま。
澄明な心境をたとえたものと解される。


                    興膳 宏氏の「漢語歳時記」より


ハルジオン
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by jugeme | 2009-06-01 22:41 | 漢語歳時記 | Trackback | Comments(2)

一家春

「一家春」とは、心慰む楽しい境地をいう。
初唐の詩人王勃の「山扉夜に坐す」という詩に、「琴を抱きて野室を開き、
酒を携えて、情人に対す。林塘花月の下、別に是れ一家春」とある。
静かな山中の家で、心を許した友人とともに琴をかなで酒を酌み交わしながら、
池のほとりの月明かりに花を愛でて過ごす一夜。
それは天地の間すべてが一つの家族となったような、春のように暖かい雰囲気だという。




                        興膳 宏氏の「漢語歳時記」より


アジサイが咲き出した
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by jugeme | 2009-06-01 21:53 | 漢語歳時記 | Trackback | Comments(0)

一家言

「一家言ある人」といえば、独自の主張や見識を持つ人を意味する。
「一家言」は、司馬遷「史記」のことばである。「史記」百三十巻最後の「大史公自序」で、
この書を著した動機や趣旨を述べている。司馬遷は先人の書の大要を網羅し、
欠を補って、「一家の言を成し」たという。従来の諸家とは異なる独自の見識に
もとづく書を完成させたという自負である「史記」に比べれば、現代の一家言など軽い軽い。



                     興膳 宏氏の「漢語歳時記」より


八重ドクダミ
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by jugeme | 2009-05-28 21:53 | 漢語歳時記 | Trackback | Comments(0)

飛翔

「戦国策」で、荘辛という弁論家が王を説得するのに、蜻蛉のたとえ話をしている。
蜻蛉は「六足四翼もて、天地の間に飛翔し」、わが身は安全だと思っているが、
幼児に捕獲されたり、蟻の餌食になったりすると。
地球の歴史が始まって以来、空を飛ぶものといえば、鳥や昆虫だけだった。
二十世紀になって飛行機が飛び、ロケットやミサイルも飛ぶ。
いまや「飛翔体」という正体不明のものまで飛ぶ時世だ。



                     興膳 宏氏の「漢語歳時記」より


アミガサフヨウ
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オリーブ
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by jugeme | 2009-05-28 21:34 | 漢語歳時記 | Trackback | Comments(0)

麦秋

麦がもっぱら輸入に頼るようになってから、麦畑を見かけることも少なくなった。
麦の収穫期をいう「麦秋」は、旧暦四月の別称でもある。
穀物の多くは秋に実るのに、麦だけは初夏に熟れるところから、この名がある。
唐の蕭穎士の「山荘月夜の作」に、「蚕罷りて里閭晏らかに、麦秋 田野喧し」とあるのは、
養蚕の仕事が一段落ついてほっとしていると、麦の刈り入れでまた忙しくなる農作業をいう。




                       興膳 宏氏の「漢語歳時記」より

ホタルブクロ
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花柚子
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by jugeme | 2009-05-26 22:44 | 漢語歳時記 | Trackback | Comments(0)

挿秧(そうおう)

稲の品種改良や農作業の機械化で、田植えの時期が最近はずっと早くなった。
漢語では「挿秧」(秧「なえ」を挿す)といい、唐詩にすでに詠われている。
江戸の漢詩人菅茶山の弟恥庵の「挿秧歌」では、近隣の衆が助けあって田植えをするさまが描かれる。
「蓑笠累累として忽ち叢を作す」集団作業、そして「挿す手は飢えし雀の啄ばむよりも急なり
という素早さで、一枚の稲田が完成する。今はない田植え風景だ。



                       興膳 宏氏の「漢語歳時記」より


タイムの花
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ツクシカラマツ
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by jugeme | 2009-05-26 22:26 | 漢語歳時記 | Trackback | Comments(0)

饅頭

和菓子の定番は饅頭である。十四世紀半ばの南北朝時代に、林淨因という中国人が、
帰国する留学僧に伴われて来日し、奈良ではじめて饅頭を売り出した。
中国の饅頭が肉をつめるのに代えて、小豆の餡をつめたのが彼のアイディアだった。
その後、彼の子孫が京都や江戸でも饅頭屋を開いて、饅頭を普及させた。
京都にはいまも饅頭屋町という地名が残る。中国の今の饅頭(マントウ)は、
餡のない蒸しパンである。



                     興膳 宏氏の「漢語歳時記」より



墨田の花火
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by jugeme | 2009-05-24 22:32 | 漢語歳時記 | Trackback | Comments(0)

膾炙(かいしゃ)

「人口に膾炙する」とは、世に広く知られること。
「膾」は刺身、「炙」は焼肉である。「孟子」尽心篇では、弟子から「膾や炙と
羊や棗とでは、どちらが美味でしょう」と聞かれて、孟子が「それは膾炙だろう」
と答えている。孟子は一般論としていったまでだが、古代の人にも刺身と焼肉は
人気料理だったらしい。広く人の口に入って好まれることが、話題にも上って
もてはやされる意味に転化した。



                          興膳 宏氏の「漢語歳時記」より


ツルハナナス
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by jugeme | 2009-05-24 22:22 | 漢語歳時記 | Trackback | Comments(0)

卯酒(ぼうしゅ)

「卯酒」とは、卯の刻(朝六時ごろ)に飲む酒で、朝酒のこと。
白居易はことに卯酒を愛好した。彼は大臣クラスの高官にまで昇任したから、
酒の飲み方もどこか優雅である。「橋亭の卯飲」という詩に、「荷葉上に就きて魚酢を苞み、
石渠中に当たって酒缾を浸す」とある。荷(ハス)の葉で包んだナレズシを肴に、
掘り割りの水で冷やした酒で一杯やるというわけだ。
卯酒は回りが早く、効き目抜群と礼賛する。




                       興膳 宏氏の「漢語歳時記」より


ユキノシタ
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イヌツゲ
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by jugeme | 2009-05-24 22:11 | 漢語歳時記 | Trackback | Comments(0)

魚鮓(ぎょさ)

「魚鮓」といっても、大方の人にはなじみがないが、「ふなずし」といえば、
琵琶湖一帯の特産品として有名だ。「鮓」とは、いわば魚の漬け物。
ナレズシという。魚を米飯に塩をまぶして漬け込み、半年から一年掛けて熟成させる。
独特の臭みがあるが、愛好家にはこたえられない味だ。
六世紀の農芸書「斉民要術」に、魚鮓の作り方が見える。
「すし」は酢飯が主体とする常識には、意外な逆説だろう。



                       興膳 宏氏の「漢語歳時記」より


ヒルサキツキミソウ
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アスチルベ 
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by jugeme | 2009-05-22 07:02 | 漢語歳時記 | Trackback | Comments(0)